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vol.02 ギアナ高地 エンゼルフォール

 

 

私がギアナ高地に特別の関心を持つようになってから久しい。

もう20年も昔のことになるが、毎年のようにヒマラヤに通っていたときも、

大河アマゾンの奥地のギアナ高地だけは常に気になっていた。

当時私は地球上に残された未踏峰とか秘境などという言葉を聞くだけで、

血は騒ぎ、地図の空白部を扱った探検記がおもしろく、寝るのも忘れて読み耽っていた。

現代は水の惑星・地球へのロマンが蝕まれ、日に日に我々の意識の中で

矯小化してゆくのはどうしようもないことだ。

しかしそれでも、死ぬまでに一度は足を踏み入れてみたいところがいくつかある。

ギアナ高地はそんな私の夢の対象であり続けたところである。

ギアナ高地はコナン・ドイルの『ザ・ロスト・ワールド』の舞台となったことで、

存在を知られていたとはいえ多くの謎が隠されていた。

世界一の落差を誇るエンゼルフォールは、1937年にジミーエンゼルという

アメリカ人に発見され、命名は彼の名にちなんだとのことだ。

979メートルという世界最長の滝が今世紀まで熱帯雨林のジャングルの中に隠されていた。

この1件だけでも、いかに近年まで厚いベールに包まれていたかがうかがわれよう。

日本で知られるようになったのはほんの10年ほど前のことで、

南米を探検する関野吉晴氏の写真や文、テレビのドキュメントによる。

いまでは地球最後の秘境とまで言われたこんな辺境の地まで、飛行機を使えば何とか行ける。

しかし日本からもっとも遠いところだとはいえ、

7回も乗り継ぎを要するのは、神経を使うとともにうんざりもする。

登山口の村ペライテプイからはテントの泊まりとなるが、

3日ほどの登りでテーブルマウンテンのロライマ(2810メートル)に立つことができる。

ここはギアナ高地の最高峰であり、ベネズエラ、ガイアナ、ブラジル三国の国境とも

なっているが、アマゾン川とオリノコ川という大河の源流部でもある。

ここは地平線まで続く熱帯雨林の密林に、突然垂直に切り立った岩壁に囲まれた

テプイ(台地)がそびえ立つ。他では見られない熱帯雨林とテプイの織り成す雄大な自然である。

激しいスコールの後、テプイから大小無数の滝が噴き出す。

一気に1000メートルほど落下するのがエンゼルの滝で、滝はよほど水量がないかぎり

途中で水煙となって消え、滝壺がないといわれる。

-中央公論 1997年5月号より-


 

  カンチェンジュンガ山麓のシャクナゲ
  冬の阿寒の森
  アマゾンの熱帯雨林保護区にて
  ギアナ高地 エンゼルフォール
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